友禅染めは手描友禅と型友禅の二種類の技法に分けられ、その歴史も作業工程も違います。
ここでは友禅染本来の技法を継承する手描友禅について、作業工程を簡単にご紹介します。
下絵
あらかじめ考えた図案どうりの模様を、仮縫いした絹の白生地に青花液で描きます。
青花は露草の花の汁で、水で洗うと落ちる性質があります。
名古屋友禅の絵模様は、花鳥風月などの古典的なものが多いのが特徴です。
糸目糊置
下絵を描いた生地の裏側より伸子を張り、下絵の線に沿って筒紙に入れた糊をしぼり出して置きます。
(糊には真糊とゴム糊があります。)
真糊に亜鉛末を加えたものが、名古屋友禅独特のものです。
糊を置くのは色挿しのとき隣の色同士が混ざり合うのを防ぐためです。
伏糊置
色挿しした部分に地色染の染料が染み込まないように、糊で模様をすべて埋めていきます。
糊はもち米、糠の粉に塩を混ぜて炊き上げたものを使います。糊伏せが完了した後にオガ粉または糠をふりかけ、糊の乾燥を早めると同時に他の生地への糊の付着を防ぎます。
引き染め
地入れの仕上がった柱の間に張り、25センチ前後ほどの間隔で伸子を張り、立ち姿勢で染めるのに適当な高さに吊るします。
幅広の刷毛を染料に浸してむらのないように塗っていきますが、むらなく染めるのには相当な熟練を要します。
名古屋友禅では、留袖などの黒の地色を染めるのに「トロ引染」という独特の手法を使います。これは、黒色染料を熱湯で溶いた物にもち米の糊を混ぜ、刷毛で引染めするもので、深みのある黒色を引き出すことができます。
蒸し
染料を生地に定着発色させるため、蒸枠にかけ、蒸箱に入れて蒸します。
色挿し
出来上がりを左右するもっとも重要な工程です。さらに溶かした染料液を糸目糊置の内側に、淡い色から順に挿していきます。染料がにじむのを防ぐため筆や刷毛を電熱器などの弱い火であぶりながら色挿しをします。
色挿しが終わったら蒸気で蒸して色止めをします。
蒸し
蒸し色挿しをした染料を生地に定着発色させるため、蒸枠にかけ、蒸箱に入れて蒸します。
彩色仕上げ
湯のしの仕上がった生地の模様部分に、さらに色、柄を筆や刷毛で補充仕上げをします。人物の顔や花の芯など色挿し工程で出来ない模様の細部を加工します。
彩色を必要としない模様もあります。